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平城宮跡守った情熱、今も 91歳学者が集大成14巻出版(産経新聞)

 古代史研究の第一人者、大阪市立大名誉教授の直木孝次郎さん(91)が、半世紀以上にわたる論文やエッセーをまとめた「直木孝次郎古代を語る」(吉川弘文館)全14巻を完成させた。邪馬台国から奈良時代までを網羅した研究の“足跡”のすべてだ。平城遷都1300年祭のメーン会場の平城宮跡(奈良市)、難波宮跡(大阪市)の保存運動に取り組んだ実践派の一面もうかがえる。「よく飽きずに古代ばかりやってきた」と語りながら、研究への熱いまなざしは変わらない。

[フォト]春の夜空に荘厳な姿浮かぶ 平城宮跡の復元大極殿でライトアップ 奈良

 ■論文800編超、タブーの忍壁皇子説も提唱

 「耳がダメになって、自分が話す言葉も十分聞こえないんです」。3月下旬、大阪市内で開かれた出版記念講演会ではこう切り出し、1時間以上にわたって歴史の奥深さを語った。

 31歳で大阪市立大助手になって以来、手がけた論文は800編以上。「まあウソ八百とでもいいますか」と笑うが、日本書紀など文献史料の冷静な分析、発掘成果と合わせた成果は、古代史研究をリードする。

 「古代を語る」の編集はは、平成19年に3年越しで「額田王(ぬかたのおおきみ)」の研究書を書き上げた直後から始まった。「ああやれやれ。これで最後の仕事(額田王)も終わった」とペンを置いた途端、出版社から企画をもちかけられた。

 「目も耳も記憶力も衰えた。ちょっとしんどいなあ」。そう思ったが、歴史ファンに親しみやすい300編近い論文や講演記録を選び、各巻に古代史への思いをつづった「あとがき」を添えて、ほぼ毎月1巻のペースで出し続けた。

 直木さんが歴史に興味を持ち始めたのは中学生のころ。当時の日本は、満州事変(昭和6年)を機に戦争へ突き進んでいった。授業中に教師が「中国4千年の歴史を顧みると、よその勢力が攻め込むことは珍しくない。しかし蒙古の元(げん)王朝など最後はみんな追い返された。日本は大丈夫だろうか」と語ったという。「中国進出は国力の発展」と信じていた当時の直木さんは「歴史は広い視野で見ないといけない」と感じ、これが研究の原点になった。

 研究者が触れたがらない古墳の被葬者にも踏み込む。極彩色壁画の描かれた高松塚古墳(奈良県明日香村)では天武天皇の子、忍壁(おさかべ)皇子説をいち早く提唱。「墓誌もみつからないのに軽率」と批判されたが、「被葬者論を避けるのは研究の放棄」と反論、「そもそも墓誌があったら被葬者は誰でも分かる」と明快だ。

 「歴史研究は推理小説のようなもの。名探偵はコツコツ歩いて資料を集め、真実に迫る努力型の方がいい」と力を込める。

 遺跡保存にも全力を傾けた。壮大な第一次大極殿が復原された平城宮跡も、約50年前は鉄道の操車場建設計画があった。保存にむけ、遺跡の重要性を訴え署名活動などを繰り広げた。

 「天皇のおられた宮殿跡を壊すのか」。市民の保存への機運の高まりは政府や国会を動かし、遺跡は守られた。1300年祭で連日にぎわう平城宮跡。「家族連れが弁当を広げて楽しむ姿を見ると、あのとき頑張ってよかったと思うんです」と感慨深げに語る。

 耳が聞こえにくくなり、日常生活では妻の恵美子さん(84)が“通訳”を務める。「不思議なもので、私の声だと聞こえるんですって」。おしどり夫婦の一面ものぞかせた。

 直木孝次郎(なおき・こうじろう) 大正8年生まれ、兵庫県出身。京都大卒業後、海軍で予科練教官などを務め終戦。昭和25年に大阪市立大助手、その後教授。退官後は岡山大教授などを歴任。「古代を語る」は1冊2730円(税込み)。

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by pw1cnqgvfp | 2010-05-12 12:09